戦後、其の頃の⿅児島 グレーの街は、やがて⾊づき始める。⾼度経済成⻑ ⽩⿃(はくちょう)たちが⽻ばたく ⼩さな踊り⼦の写真から徐々に増えていく集合写真。 様々な舞台が展開される。 1枚の家族写真が舞台上のスクリーンに映し出される その中の1⼈の少⼥にクローズアップ 上⼿、下⼿から5台ほどの鏡がゴロゴロと運ばれてくる。 レッスンの始まりである。 下⼿の壁に「⽩⿃会」※1という看板が出ている 先代の⻑野トキ⼦先⽣が指導をしている。 ⺟(ヱミ)と少⼥(⽩⿃⾒なみ)が⾒学に来る。 少⼥は、バレエにのめり込んでいく。 先⽣が「⼀緒にやってみますか?」と声をかける。 ⼀緒に踊り出すと夢中で動き出す少⼥。 喜びに輝いた表情を先生も母も、驚いて眺める。 少女は踊り終わると⺟に抱き着き、 これ(バレエ)をやりたいとまっすぐに⺟の⽬を⾒つめる。 バックに映し出される⽂字 「先⽣、私には特別に教えてください!!」 (⽂字と共にアクティング) ジャンプしながら帰っていく。 ⻑野先⽣は微笑み⾒送り 【暗転】 ⽩⿃を踊るバレリーナたち 上⼿から舞い出てくる 上⼿花道には観客席があり初めての「バレエ」に ⽬を輝かせて鑑賞する。 昭和の観客たちもいる。その最前列に座る少女と父母。 喝采を送る観客たちとそれを浴びてレヴェランス※2する プリマバレリーナたちは ⾼揚感のままにフリーズする。(拍⼿の⾳の中) 茫然とした少⼥と父母は、席を⽴ち、帰り道は舞台中央前へ向かう。 ピン残し。(⽩⿃たちと観客はけ) 正⾯に感動を⾒せる少⼥は、 やがて憑かれたもののごとく踊りはじめる。 その周りでこれまで踊って来た古典バレエの主役たちが、少⼥を囲みロンド。 最後は、皆が⼀⼼同体となっている(フワーッとイメージが消える如く上下へそれぞれハケ) 最後、⻑野先⽣に「⽩⿃みなみ」※3として⽩⿃会を引き継ぐ少⼥。先⽣を⾊々な思いで⾒送る⽩⿃みなみであった。【暗転】
【昭和らしい装置】 ⽩⿃みなみが学校から帰って来る。 鞄を置くと⺟は、書き物をしている。 ⻨茶を⽤意する。 と読んでみる⽩⿃みなみ…イメージが膨らみ踊り出すみなみ。 そのうち、踊る。またまたイメージが膨らんだ⺟は、また書き始める。 すると上⼿よりその頭の中が現れはじめる。 ・「初秋の幻想」 ⽜若丸、弁慶、⽉⾒草の精/ユニゾンで踊る踊りは盛り上がり、⽬を輝かせる⼆⼈ もう教えに⾏く時間である。⽩⿃みなみは、鞄を持ち駆け出す 列⾞に揺られ降りると先⽣らしい⾵情で⽣徒たちに教える。 帰り道、教科書を読みながら帰る⽩⿃みなみ。 友だちが、通り過がる。 誘われるが、「またね」と⼿を振り家に着くとそのまま倒れ込む⽩⿃みなみ。⺟驚きの中 【暗転】
⽩⿃⾒なみ、椅⼦にかけ過去の映像を⾒ている。 ⽩⿃⾒なみの⼿が踊りはじめる。 ⾳が流れ出す
メロディーを踊る⽩⿃⾒なみの断⽚映像が流れ上⼿、下⼿から若き⽇の⽩⿃⾒なみ(五⼗鈴)が、踊り出てくる。 過去と現在のパ・ド・トロワ※4 若き⽇の⽩⿃⾒なみと踊る。
「⾒なみ先⽣リハーサルお願いいたします」 ⾚カーテン閉まる。 舞台前に⽩⿃⾒なみ(若き⽇の⽩⿃役:五⼗鈴)残されるとガウンと⽔を⽩⿃に渡す。 「パキータ」のリハーサルである。 幕が低めに上がると薄暗い舞台の奥の⽅からダンサーたち、体を整えながら準備。 「はい、よろしくお願いします」と⽩⿃の声。 ⾳楽が流れるとダンサーたち踊り出てくる。⽌める⽩⿃。 ダメ出しして下⼿でダンサーAにカツを⼊れ改めて幕が上がる。 ダンサーたちは、「パキータ」を最後まで踊る。 「パキータ」の幕が閉まると【オペラカーテン前のレヴェランス】
⽩⿃⾒なみのモノローグが始まる。 “けもの道を 唄うように軽やかに ⾜を⾎だらけにして ⾛る少⼥” (字)「⽩⿃は染まず漂う」 (字)「僕のインクは⽩⿃の⻘い⾎で、 その⽩⿃は、必要ならばより⽣きんがために 死にもするのだ。」 ジャン・コクトー (映)けもの道 (字)「けもの道を唄うように軽やかに ⾜を⾎だらけにして⾛る少⼥」 (字)「誰もが、かつては⼦どもだった。 そうして、⾃分の中に眠る、その⼦どもの とらわれの無い視線で世界を⾒ることを 忘れてはいけない」 藤原新也 (画)蓮 (⾳)「画になる光景というのは何かというと命なんだよな。 この命がこう、湧き⽴つような、 それが“美しさ”になるわけで、極めて単純に⾔えば 画になるということは、あちこちに⽣命の発露が パッパッパと⾒えるということ」 (字)政治的な独⾃性は続かない。 ベートヴェンの時代の王など覚えていない。 だが、⽂化は残る。 (字)⽂化は終わらない。Culture doesnʼt end・・・ (字)(⾳)(画) 「Life!Life!Life!」 「⼈⽣に必要なものは、想像⼒と少々のお⾦だ。 なぜ泣く。 ̶̶もう踊れないわ。脚が動かないのよ。 そう思っているだけだ。戦うんだ。 ̶̶何のために? ⾒たまえ。君も認めてる。何のために? ⼈⽣そのもののためにだ。 ⽣き苦しみ楽しむんだ。 ⽣きている事は美しく素晴らしい!クラゲにとっても。 君にはその上芸術がある!バレエがある! ̶̶脚がなきゃ踊れないわ。 腕が無くても⾜の指でヴァイオリンを弾く芸⼈がいる。 君は戦おうとしない。常に病気と死を考えている。 死と同じく、⽣も避けられない。 ⽣命だ!命だ! 宇宙にある⼒が、地球を動かし、⽊を育てる。 君の中にある⼒と同じだ。 その⼒を使う勇気と意志を持つんだ。(おやすみ)
突然、中央のオペラカーテンからピエロ1、2が顔出し精⼀杯踊るが、ピンがなんだかズレる そこに照らされながら必死に笑いを誘う2⼈(画)
来店客は、老婦人と少年。 少年はなんだかもじもじしている。 ⼥の⽅をチラチラと⾒る。 何か⼿紙のようなものを持っている。 ラブレターだ! カフェを運ぶ⼥。 少年は恥ずかしがっているだけで中々渡しきらない。 友⼈たちが通りかかり、何か⽿打ちして笑っている。 少年のことのようだ。 友⼈たち、⾯⽩そうに少年を取り囲み⼿紙をもてあそぶ。 ムキになってそれを少年は阻⽌しようとする。 ウェイトレスは、なんとなく⼿に取る。⾃分宛だ。 突然の展開にあせる少年。⼤喜びした友⼈たち。 意外と嬉しそうなウェイトレス。 まわりで知らんふりしていた友⼈のアルバイターたちも、 微笑ましそうに⾒ている。 2つのグループに囲まれながら上⼿、下⼿へハケる2⼈。 老婦人1人。それを眺めてほほ笑んでいる。
上⼿から⼀⼈の⼄⼥。 待ち合わせをしているようだ。 そこへあせって現れる男。 おずおずと歩調を合わせながら踊り出す2⼈。 2⼈各々の夢を語る。 ⽬が合う2⼈。曲終わり、2⼈固く⼿を繋ぎ⾛り出す。 もしかしたら、あの婦⼈の思い出かもしれない。 懐かしそうにティーカップに⼿をかける⽼⼥。 同じポーズで⼿を差し出す⻘年。 今はもうあの⼈は逝ってしまった。
⼀⼈残される⽼婦⼈ 落ち葉が舞い始める。 秋の気配を感じながら舞う⼥たち。 ⼥性たちがそれぞれ秋を踊る。 曲終わり、⼩さな草花に⼼を奪われる⽼婦⼈と淑⼥たち。
上⼿に、雲から顔を出す⽉
表情を変えていく⽉。「サロメ」と題字。
下⼿に捕らわれのヨカナーン。
サロメは、⽉に照らされ段上に現れる。
ヘロデとヘロディアス⼿を取り合って、
背を向け国⺠へ祝福のアピールをする。
背を向けていたヘロデが、サロメの⽅に向く。
とりわけ愛おしそうにサロメを眺め、撫でる。美しい扇を与える。
サロメ、不思議そうに⾒上げ王から貰った扇をもてあそぶ。
兵⼠たちは、サロメを憧れ、ずっと⾒続けている。
【囚われ:鉄格⼦を⿊⼦もしくは、兵⼠が持って来てその奥にヨカナーン】
囚われの予⾔者ヨカナーンは継⽗と⺟を罵倒し神に祈る。
王にも屈しない予⾔者にサロメは、好意を抱くが、全く⾃分を相⼿にしない。⽗は奥の段上で侍⼥たちと酒をくみかわす。
傍らに⺟ヘロディアス。
ヘロディアスは、なぜ「あの忌々しい予⾔者を始末しないのか?」とヘロデを責め⽴てる。
飽き飽きしたヘロディアスは、サロメに踊りを要求する。
財宝や領⼟を何でも欲しいものを与えると王は約束する。
サロメ、⾃虐と視線の陶酔の中踊る。 舞台上の異様な緊張感の中、踊りきる。 ※舞台上は欲望と威圧感、サロメの悲しさと怒り、 孤独と観ている観衆をあざ笑うような ⾃虐的な陶酔に満ち満ちて、 劇中劇の醍醐味を緊張感をもって描く。 ※観ている観衆(王、王妃、兵⼠、侍⼥たち)と サロメ両者の情動を⾼度な演劇として演者 に演じてもらいたい。 私の欲しいものは 「ヨカナーンの⾸です」とヘロデにつめよるサロメ。 どんなになだめても、 ヘロデに「褒美」を求める強い意志に負け、 王はナーマンに指⽰を出す。 果たしてサロメの求めたのは何であったのか? ⼼から欲したヨカナーンの接吻・・・?
鳳凰HoOhが現れ⽣命を注ぎ込む 段上に鳳凰が姿を現す。 鳳凰は、おずおずと中央で舞う ⾼倉帝、徳⼦、祇王、仏御前、兵⼠たち、卑弥呼、義経、 クサヒメ、クマソタケル、ヤマトタケル ※出はサスの中にそれぞれが⼊って来るとか。 それぞれのまわりを漂うように魂を吹き込んでいく。 不死⿃(鳳凰) ⾳盛り上がり 舞うそれぞれの中に、全員が総勢揃って躍動をみせる。 他キャストもラスト全員揃って舞う。 ラスト、中央に⽩⿃⾒なみ(⾐裳:⽩いドレス) 囲んでポーズ 【暗転】
全てから解脱した安らぎの中 清らかな光の中に、全てを昇華する⾒なみが舞う。 中央の明かりの中 ⽩⿃⾒なみソロの踊り 皆で⾒ている。 【暗転】
フィナーレ 出演者全員 太⿎の野性的な⾳ 聞かせる レヴェランス